未来の帯広競馬場デザイン・コンクール審査結果報告

大変遅くなりましたが、8月20日に開催いたしました『未来の帯広競馬場デザイン・コンクール』の審査についての報告をまとめましたので、皆様にご報告申し上げます。

なお、この報告と、他作品についての集計、および市民賞の集計結果は、来る9月4日、帯広市市長とばんえい振興室長に提出いたします。
市民からの意見が、ばんえい競馬の新時代誕生の基盤となることを祈りつつ、理事長と私・旋丸が丁重に手渡す予定です。

『未来の帯広競馬場デザイン・コンクール』審査会での意見の要約

[総体として]
いずれも良く練られた作品であり、順位を決めるのは難しい作業であった。作品を大きく分けると、「観光重視型」、「農業と食育重視型」、「商業施設重視型」に大別することができるだろう。また、テーマとして与えた「未来」という言葉のとらえ方から「近い未来=現状改善型」と「かなり先を見据えた未来=理想追求型」に分けることもできる。これらの考え方の違いや価値観が、審査員の意見が分かれた原因であったと思われる。

[選考の方法]
グランプリと準グランプリの選考について、当初、「経済効果」、「市民の集まる可能性」、「十勝らしさ」、「環境に優しいか(エコ)」、「観光的価値」、「実現可能性」、「予算的問題」などの視点で個別評価(採点)し、それを合計した総合点で決めることも考えた。しかし、もっとざっくりした総合評価一本で決める方がむしろ公平であろうとの考えに至り、グランプリと準グランプリの順に議論を交えながら決定することとなった。ただし、最終的にはグランプリと準グランプリの優劣差は小さく、順位をつける作業は極めて難航した。

[各作品について]
【グランプリ】「未来のばんえい・帯広競馬場構想」帯広畜産大学ばんえい研究会について
この作品は、「観光重視型」「現状改善型」に分類されるだろう。特に観光拠点構想、物産展、屋台村、バリアフリー、照明設備、宿泊施設、シャトルバス運行などは、学生さんが足繁く競馬場に通った中で生まれた発想であろう。また、馬車の運行や堆肥販売、騎手・調教師との交流会など、ばんえい競馬の魅力を伝える方策はいずれも具体性があり、近未来の構想として実現可能な具体的提案が数多く含まれており、その点が高く評価された。
特に、空港からの直通バスや宿泊施設については実現を強く望む声があった。

【準グランプリ】「未来の帯広競馬場」十勝馬事振興会・青年部について
「農業と食育重視型」、「理想追求型」に分類されるだろう。十勝の基幹産業である農業を全面に打ち出し、競馬場に教育委員会とも連携した「教育ファーム」の機能をもたせる構想は注目に値する。
また、帯広競馬場が十勝馬匹組合から現在の十勝農協連へ引き継がれた歴史的経緯をみても、農業と馬(ばんえい競馬)の組み合わせは、十勝らしさを最大限に生かしたものであり、十勝の住民からも広く支持される構想ではないかと考えられる(市民賞の受賞)。
 さらに、物産展やミニ動物園、公園、イベント誘致などの具体策は実現可能性の高い提案であろう。

【佳作3点】
(1) 「最強の集客施設」河口晋一氏について
「商業施設重視型」に分類される河口氏の作品については、経済性(競馬場の賃貸料を賄う点)と集客性で高い評価を得た。しかし、商業施設に重点が置かれており、それらがばんえい競馬と分離する可能性や、十勝らしさやばんえい競馬の魅力を発信する上での弱点を指摘する意見も出され、最終的に評価が分かれた。
(2) 「とかちの真ん中・帯広競馬場」上田ヨセフ氏について
「農業と食育重視型」に分類されるだろう。畑の運営や馬耕を前面に打ち出した作品であり、十勝の歴史をつたえるコンセプトは貴重な意見である。その他、温泉施設や馬とのふれ合いコーナーやスポーツジム、ファミレスなど複合施設的要素のほか、競馬場周囲に夏はジョギング、冬は歩くスキーのコースを設けるなど、市民と密着した競馬場の姿が描かれている点も好感が持たれた。しかし、もう一歩踏み込んだ具体的デザインの提案を望む声が聞かれた。
(3) 「命を担う本拠地確立化プロジェクト~Food Life ばんえい~」夢希摑について
典型的な「農業と食育重視型」、「理想追求型」に分類されるこの作品は、農業青年グループならではの発想であろう。特に「食育重視」の視点に若者の感性がうかがわれた。十勝の強みである「農業」と十勝の歴史の中で活躍した「馬」を組み合わせるコンセプトは、グランプリ作品や上田さんの作品にもみられるもので、未来の帯広競馬場の姿を考える上で、重要なキーワードになるであろう。
また、箱物に偏りがちな発想とは一線を画したこの作品は、低コストでの実現可能性という点でも高く評価された。しかし、具体的な馬の活用または競馬場の特徴を生かすという点で明確なデザインが示されておらず、僅差で入賞を逃した。

[まとめ]
 今回のコンクールで感じられたことは、未来の競馬場をどのようにするかというコンセプトの作成は、市民を巻き込んだ議論を経て、遂行して欲しいということである。3年前のばんえい競馬存廃問題で、帯広市一市で開催することになった背景には「全員参加型」のキーワードがあったことを忘れてはいけない。未来の競馬場を語るとき「観光重視型」、「農業と食育重視型」、「商業施設重視型」のいずれにするかという大きなコンセプト作りは、経済性を重視しすぎることなく(企業提案重視ではなく)、是非、市民を巻き込んだ議論に発展させていただきたい。そして、5年後、10年後、そして50年後に評価される未来図(理想追求型)を描いて欲しい。