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■馬文化

従順で力持ち、欧州ルーツの大型馬

柏村文郎教授(帯広畜産大学)

 馬と人間の歴史は古く、六千年前から人は馬を飼いならして使うようになりました。家畜となった馬は、時代や地域によってさまざまな用途で利用され、いろいろな呼び方が生まれました。例えば、競走馬、乗用馬、ばん用馬(ばん馬)、軍用馬、肉用馬などです。最近ではスポーツホースやレジャーホースという呼び方もあります。この中で「ばん馬」は物を引くことを目的として改良された馬をさす言葉で、英語ではドラフトホース(draft horse)と呼ばれています。

 北海道には日本在来種である北海道和種馬の「ドサンコ」と呼ばれる馬がいます。ドサンコは、体高(首の付け根の背側から地面までの高さ)が125?135センチの小型の馬です。明治以降、ドサンコは北海道の開拓に使われましたが、多くは背中に荷物を載せる駄載馬でした。広い大地を開墾したり、山から木を切り出したり、重い材木や石炭を積んだ荷馬車を引いたりするには、より力の強い大型の馬が望まれました。そこで、ヨーロッパの大型の品種が輸入され、より大型の「ばん馬」がつくられるようになりました。

 人間が騎乗する乗用馬は速く走ることや敏しょうな動きが要求されますが、「ばん馬」は、けん引力が強く、従順で、長時間のゆっくりした作業に耐えられる馬です。農用馬として活躍した「ばん馬」の体格的特徴は、肢(あし)が太く、胴体が丸く大きく、さらに物を引くのに有利なように背丈に対して胴が長いことです。また、サラブレッドなどの軽種に比べ、重種とも呼ばれる「ばん馬」は皮膚が厚く、太りやすいのが特徴で、体重は1トン、体高は180センチにもなります。

 北海道開拓の厳しい農村生活の中で馬力を競い合う娯楽が生まれ、それは北海道各地で「草競馬」や「草ばん馬」として行われるようになりました。「草ばん馬」は1946年に正式に競馬として認められ、今の「ばんえい競馬」として発展してきました。世界には、さまざまな種類の競馬がありますが、ばん用馬を使った「ばんえい競馬」は世界でただ一つ、北海道にしかない貴重な競馬なのです。

2007年8月25日付け 北海道新聞掲載記事より